チャレンジしてくれたのは
荒牧悠
さん

アーティスト
慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学政策メディア研究科修了。2023年より多摩美術大学美術学部統合デザイン学科講師。構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作している。作るオブジェは動いたり動かなかったり、扱う素材は様々。その素材だからこそできる形や振る舞いを見つけたい。主な参加展覧会に企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」(2024,21_21designsight)、「デザインあ展neo」(2025, TOKYO NODE GALLERY)。個展「荒牧 悠 "こう (する+なる)” ― phenomenal # 02」(2022,nomena gallery Asakusa)など。
完成したのは、「くるくるパーティー」

今回「あの人のうご工作エンジン」に挑戦してくれたのは、アーティストの荒牧悠さん。「遠心力を観察できるものが作りたい」と、色とりどりの紙を使って完成した作品の名前は「くるくるパーティー」。
なんと、うご工作エンジンを5つ合体させて一斉に回します。カラフルな輪っかや筒が思い思いに踊っているかのような賑やかな様子はまさにパーティそのもの。止まっているときも、回っているときも、それぞれに違った楽しさがある、新しい「うご工作エンジン」が誕生しました。
普段の作品制作でも、設計図をもとに何かを作ることはほとんどないという荒牧さん。「うご工作エンジン」でも、手遊びのように細長い紙を輪っかにしてみたり、二重にしてみたり、それらを回してみるところから始まりました。回り方を観察していると、「回すと外に広がる(遠心力)」ことを発見。「遠心力が見えるようなものが作りたい」と次々にいろんな形が生まれていきます。
それぞれに面白い動きをする綺麗な欠片のようなパーツが集まってきて、この中のどれか1つを選んでブラッシュアップしていくのがいいのか、でも1つに絞るのはもったいないような…。方向性を決めかねていましたが、荒牧さんが事前の打ち合わせで「いくつかのエンジンを繋げてもいいんですか?」と尋ねてくださっていたことを思い出し、ではすべてを活かして壮大なエンジンにしよう!という大胆な方針が決まりました。


ちなみにこの細長い紙は、「ペーパークイリング」という、紙をくるくる巻いて花や模様などの立体作品を作るペーパーアートのための紙を活用しているそう。そのため今回は紙をカットする工程はほとんどありませんでした。(クリエイターのみなさんの引き出しから、見たこともないとっておきの画材や文房具が登場するのも、このコーナーの醍醐味です)
カラフルな紙の束から、その都度直感的に色の組み合わせを選びながら、パーティーの仲間たちがどんどん加わっていきました。

5つのエンジンがいっぺんに回るときの見応えはもちろんですが、1つ1つの動きの面白さも奥が深いので要注目です。左から2番目の朝顔のような三角錐トリオは、よくよく見ると実は土台と接している面は常に一定なことに驚きがあります。
一番左の2つの筒は同じ形なのになぜか異なる回り方をしていますが、なぜか分かりますか?筒を作るのは簡単なので、ぜひ皆さんも作って確かめてみてくださいね。(ヒントは、丸い磁石を使っていることと、その付け方です!)

最後に繋げたエンジンを一気に引き出すための「ちょうどいい棒」を求めてアトリエを探していた荒牧さんが手に取ったのは、定規。エンジンの上に乗せるものが1つだけのものと、複数回すものでは引き出す長さが異なるため、右手と左手の2グループに分けています。
繊細で美しい工作と、手近にある定規を持ち手に選ぶ一見アンバランスな組み合わせも、「くるくるパーティー」の味になっているような気がします。

最後に、「うご工作エンジン」を作ってみたい人へのアドバイスを荒牧さんに尋ねました。
「手を動かしてみて、まずは輪っかを作ってみようとか、丸を切ってみようって、小さなパーツを作ってエンジンに載せてみるところから始めてみてください。そこに何かひと手間加えてみると、今まで知らなかった動きをしたり、予想していなかった動きがきっと生まれると思います。手を加えるのが怖かったりもするけれど、試すことを躊躇わずに、こうしてみたらいいかな?ああしてみたらいいかな?っていうのを繰り返したらきっと楽しいものが生まれると思います」と教えてくれました。
これまで真鍮や紙などの素材の特性を活かした作品作りをしてきた荒牧さんですが、今回の制作で磁石そのものの素材としての面白さにも気がついたと話してくれました。ひょっとすると、「うご工作エンジン」がこれからの荒牧さんの活動にも影響があるのかもしれないと思うと、とても楽しみです。







